職員コラム 第2号:作業療法士

職員コラム『モモ』の主人公やその仲間たちとリハビリステーション ルトゥール

美園フォレストクリニック

リハビリテーション ルトゥール

作業療法士 課長代理  中山 弘基

 

『モモ』(ミヒャエル・エンデ著)という文学書を御存じでしょうか。

主人公は浮浪児の少女モモ。モモに対して、多くの人が思わず自分のことを話したくなったり、仲たがいしている者同士を何も言わずにじっと聴いているだけで和解させたりする不思議な力をもっています。

モモとその仲間たちは創造的で豊かな毎日を過ごしていました。その対極として「時間貯蓄銀行」と呼ばれる灰色の組織が描かれ、彼らは自分たちが生きながらえるために世間の人々の時間を気づかれることなく盗んでいました。時間を盗まれた人々は効率よく無駄なく時間の節約を強いることが「善」であり、1分1秒でも無駄は「悪」という価値観が蔓延して、次第に世間の人々は無機質で険悪で何かに追われる脅迫的な日々を過ごす…。

 

この物語は、効率を強要される社会に対しての風刺であり、時間とは何か、何故毎日せっせと働いているのかを考えさせられる物語です。目まぐるしいこの社会には本当に「時間貯蓄銀行」が存在し無意識のうちに灰色の男たちと契約しているのかもしれません。

 

当法人美園フォレストクリニックのデイケア(リハビリステーション ルトゥール:以下、ルトゥール)は、復職や再就職を目指す方々が過ごす場所として提供しています。利用者の中には企業の常識を身に着け、モノづくりの考え方と人の価値観や豊かさを同じ線上で考える傾向の人が散見され、ちょうど「灰色の男たち」と契約しているように思えなくもありません。

ルトゥールでは、ストレスコーピングのスキル向上のため利用者同士が感じたこと口に出して頂き、凝り固まった企業の常識に第三の選択肢(別の価値観)や自分の感情に目を向けることを実践して頂いています。そして新たな選択肢や価値観を利用者それぞれの常識や企業での経験と照らし合わせて利用者自身が最適化していくことを目標としています。

ルトゥールの役割は、モモやその仲間たちのように、利用者自身が自分からその人その人の内なる声に耳を傾けて創造的で豊かな毎日を過ごすきっかけ作りの場所でありたいと思います。